ひと中心のヘルスケア 政策の枠組み
世 界 保健機関 西太平洋地域
ひと中心のヘルスケア 政策の枠組み
世 界 保健機関 西太平洋地域
出版データ目録に収録されている WHO の蔵書
ひと中心のヘルスケア:政策の枠組み
1. 患者中心のケア
2. ヘルスケアの提供
3. 保健政策
4. 保健体制
ISBN 978 92 9061 317 6
(NLM 分類:W84)
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目
次
はじめに ............................................................................................................................................. 1 1. 2. 3. 4. 緒言 ............................................................................................................................................. 3 ひと中心のヘルスケアおよび保健体制の論理的根拠 ................................................................. 4 ひと中心のヘルスケアのビジョン .............................................................................................. 7 ひと中心のヘルスケアを推進するために改革する領域と範囲 .................................................. 8 個人、家族および地域社会 .............................................................................................. 9 医療従事者...................................................................................................................... 10 ヘルスケア機関 ...............................................................................................................11 保健体制 ......................................................................................................................... 13 5. 結論 ........................................................................................................................................... 16 地域委員会決定事項 WPR/RC58.:R4: ひと中心型ケアのイニシアチブ(People at the Centre of Care Initiative) .................... 18
付録:
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ひと中心のヘルスケア
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緒
言
近年、ヘルスケアに対する患者の考え方と、どのようにしたら保健体制は総体的な手法ですべての 保健ステークホルダーと顧客層のニーズに十分に対応することができるかという点に関心が高まりつ つある。
WHO の西太平洋地域委員会と東南アジア地域委員会を通じてこれまでに出された加盟国の勧告は、 以下の課題を推し進める必要性を反映している:政策の平等さと公正さ、倫理原則に強固な基盤を置 いたプログラム開発、ヘルスケアの質と患者の安全性、人間の尊厳・人権およびニーズと家族・文化 および社会の役割、健康状態を決定づける幅広い心理社会的および文化的要因、医療実践・医学調査 研究および医学教育に関連する倫理。
これらの課題には、多岐にわたる関連性と重要性がある。ヘルスケアの質と安全性を改善し、人々 のケア体験を向上させるためには、保健体制のデザインだけでなく、患者ケアの焦点とプロセスにも 目を向ける必要がある。保健体制をデザインするための一連の原理原則として、患者とほかの保健ス テークホルダーのニーズと期待に関する情報を最大限に活用することは、アジア太平洋地域の国々の 共有課題である。
政策の枠組み
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ひと中心のヘルスケアおよび保健体制の論理的根拠
20 世紀に現代医学が成し遂げた業績には目を見張るものがある。診断手順、非侵襲的介入、医薬品 および有効な健康促進と疾病予防対策の進歩により、医療従事者がさまざまな健康状態を診断し、管 理し、治療する能力が大幅に改善された。ただし、保健体制は重要なターニングポイントに差し掛か っている。
世界的にみて、疾病負担(burden of disease)は感染症から慢性疾患に移行しているため、公衆衛生の パターンと転帰が変わりつつある。世界規模ならびに西太平洋および東南アジア地域規模でみた場合のい ずれも、いまや糖尿病、うつ病、心血管疾患および障害が疾病負担の半分以上を占めている。この傾向は 今後も続くことが予測され、特に疾病負担の移行によって人々が保健制度のなかで複数の医療従事者と接 触を持ち続ける必要性が高まるため、現在の保健体制にとって大きな課題となっている。
これと同時に、教育水準の向上、情報が入手しやすくなったこと、消費者主義の高まり、商品やサ ービスへのアクセス拡大によって、ヘルスケア提供に対する地域社会の期待が変化しつつある。しか るべき場所に基本的な健康インフラストラクチャーと必須の保健サービスが設置されれば、次に人々 は保健体制、ヘルスケア機関および医療従事者に対して、遂行能力のレベルを向上させるように行動 し、人道主義に基づく総体的なアプローチをヘルスケアに採り入れ、ケアを必要としている人を多面 的なニーズをもつひとりの人間として捉えて尊重してくれるヘルスケアを期待する。
患者の満足度は、 ますます重要な検討事項になりつつある。 国際患者団体連盟 (International Alliance of Patients' Organizations)によれば、ヘルスケアの質の受け止め方について全国規模の調査を行った ところ、全体で約半数の患者が現行のヘルスケアに不満を抱いており、ほぼ同じ比率の患者が今後 5 年 間 の あ い だ に 顕 著 な 改 善 は み ら れ な い と 考 え て い る こ と が わ か っ た ( A Survey of Patient Organizations' Concerns:Perceptions of Healthcare, 2006) 。
患者の安全は全世界の課題である。 患者の安全のための世界連盟 (World Alliance for Patient Safety) は、 発展途上国でのヘルスケアに関連する感染症リスクが先進国よりも 2~20 倍高いと報告している。 国によっては、ヘルスケアに起因する感染症に罹患している患者の比率が 25%を超える場合がある。 随時、全世界で 140 万人以上の人々が院内感染に罹患しており、先進国世界の近代的な病院に入院し ている患者の最大 10%が 1 種類ないし数種類の感染症に罹患している。大半は回避することができる にもかかわらず、安全性が確保されていないケアがこれほど高い比率で根強く残っていることは憂慮 すべきことである。
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ひと中心のヘルスケア
ケアの対応力は、もうひとつの重要課題である。これは、 World Health Report 2000, Health Systems:Improving Performance に定義されている保健体制の遂行能力を評価する 3 つの重要な尺度 のうちのひとつである。これは医学以外の側面に対する人々の期待に応えるものであり、以下の項目 で構成されている:人々を尊重すること(尊厳、秘密保持および自主性の尊重)ならびにクライアン ト志向(すばやい対応、アメニティの品質、社会支援ネットワークへのアクセスおよびケア提供者を 選ぶ権利) 。
World Health Report 2000 は、貧困な地域住民に提供されるケアの対応力が最低レベルであること に言及しており、 「対応力を保健体制の本質的な目標として認識することにより、これらの体制が人々 へのサービス提供のためにあることを確立し、提供される純粋な医療に対する人々の満足度評価を超 える取り組みを行う」ことを強調している。健康を決定づける心理社会要因、文化要因および幅広い 環境要因などの要因が甚だしく軽視されている環境では、これらは生物医学の領域や特化されたケア モデルの範囲をはるかに超える重要な側面である。
患者中心主義のニーズは重要な世界的課題となり、米国国立科学アカデミー医学研究所(Institute of Medicine of the United States National Academies of Science) はこれをヘルスケアの品質にかかわる 6 つの特性のひとつとして定義している。残る 5 つの特性は、安全性、適時性、有効性、効率および公 平さである。 しかし、 患者中心のアプローチでは品質と総体的なヘルスケアの問題に取り組むものの、 多岐にわたる健康課題のなかには対処していない事項もある。ひと中心のアプローチでは、人々が病 人にならないうちに、自分自身の健康を促進し健康を守るための情報と能力を得る必要があることを 認識することにより、これらの幅広い課題に対処する。臨床の場を超えてすべての人々、家族および 地域社会に手を差し伸べる必要がある。また、医療従事者も人間であり、ヘルスケア機関と保健体制 も人間によって構成されている。これらの人々のニーズも考慮すべきであり、彼らには体制をよりよ い方向に変える権限が与えられなければならない。つまり、ひと中心のアプローチでは、保健制度の 顧客層とステークホルダー全員の責務と能力に加えて、権利とニーズもバランスよく考慮することが 必要である。
WHO では、特にひとをヘルスケアの中心に位置づけることに関して、現代の煩わしい保健体制が直面 する問題や課題に関する有意義な研究や報告を発表している。主な検討事項には、メンタルヘルスにかか わる問題の重要性(The World Health Report 2001) 、ヘルスワーカーの中核的なコンピテンシーとしての 患者中心主義(The Challenge of Chronic Conditions:Preparing a Health Care Workforce for the 21st Century, 2005) 、 ヘルスケアの質を左右する重要な領域としての患者中心主義 (Quality of Care:A Process for Making Strategic Choice in Health Systems, 2006)などがある。
政策の枠組み
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保健体制がヘルスケア提供および保健制度の評価という従来のモデルを超えて活動することになれ ば、保健体制デザイン、財源機構およびケアの焦点とプロセスに大きな関心を向ける必要がある。特 定の国々で実施した文献のレビューと一連のステークホルダーの協議から、目を向けなければならな い現行保健体制の格差と欠点が多数確認された:
• 保健体制と保健サービスは、過剰な生物医学志向、疾患重視、技術主導型および医師支配型に至 っている。保健体制そのものを含め、ヘルスケアのバランスを回復する必要がある。
• 保健財源機構が最適な状態ではなかったため、ケア提供者の行為が不適切になっている。具体 的には、短い診療時間、患者照会の欠如、報酬に対して過少または過剰なサービス提供、不十 分な症例管理およびケアに一貫性がないことなどが挙げられる。
• 医学教育がますます器官系と疾患の状態に主眼を置くようになった。特に、文化的背景、心理 社会的要因、医学倫理、コミュニケーションスキルおよび関連スキルといった幅広い重要な側 面が軽視されている。技術面の質だけでなく、ケアの体験的要素も重要視する必要がある。労 働力の開発と政策もそれに合わせて見直すべきである。
• 患者と家族がヘルスケアにほとんど参加していない。これには、教育水準や健康リテラシーの 水準が低いこと、文化的に適切なわかりやすい情報や教育材料の利用と共有が限られているこ と、短時間の慌ただしい診療、保健体制が地域住民の健康と公衆衛生に主眼を置いていないこ となどの要因が寄与している。
• 専門化と不十分な紹介制度は、治療の断片化と不継続性をもたらす。いずれも保健施設内や保 健施設間で認められるほか、公的な保健制度と支援グループや地域社会をはじめとする他のケ ア提供源との間にも認められる。
• 従来、健康という方程式の供給側に主眼が置かれており、ヘルスケアの生物医学的側面、技術 的側面、 提供者側および提供制度側が重要視されてきた。 いまや需要者側、 つまり患者、 家族、 地域および社会にまで高い関心を向ける時期である。
アジア太平洋地域全域で、基本的なインフラストラクチャーと基本的な保健サービスが設置されて おり、社会経済状態が改善している。ひと中心のヘルスケアを提供するための保健体制強化と新たな 方向づけを今すぐにでも健康の協議事項にすべきである。
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ひと中心のヘルスケア
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ひと中心のヘルスケアのビジョン
ひと中心のヘルスケアの全体構想は、個人、家族および地域社会が、それぞれのニーズに対応して くれる信頼できる保健体制から人道的かつ総体的なサービスを提供してもらうと同時に、保健体制に 参加できるというものである。保健体制はステークホルダーのニーズを中心に設計され、個人、家族 および地域社会は、ヘルスケアの質と対応力の推進向上をめざすために、公共、民間、非営利の健康 セクターおよび関連セクターの医療従事者やヘルスケア機関と協力することができる。
ひと中心のヘルスケアは、人権と尊厳、機会均等、参画とエンパワーメント(権限付与) 、アクセス と公平さ、パートナーシップと対等な人間関係など、国際法に明記されている普遍的な価値観と原理 原則に起源をもつ。以下の事項を推進することにより、個人、家族、地域社会、医療従事者、ヘルス ケア機関および保健体制がよりよい成果を得ることを目標としている:
1. ケアとコミュニケーションの文化。ヘルスケア利用者に情報を提供し、意思決定と選択に関与 してもらう。ケア提供者はヘルスケア利用者のプライバシーと尊厳を尊重し、総体的な手法で 彼らのニーズに応える。
2. 責任能力があり、対応力があり、説明責任を果たすことができるサービスと施設。手頃な費用 で利用しやすく、安全、倫理的かつ効果的でエビデンスに基づいた総体的なヘルスケアを提供 する。
3. 支援的なヘルスケア環境。しかるべき政策と介入、良好な治療環境と労働環境、プライマリケ アのための強力な労働力、保健サービスの計画立案と政策開発および品質改善のためのフィー ドバックにステークホルダーが参画する制度を推し進める。
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ひと中心のヘルスケアを推進するために改革する領域と範囲
保健体制が直面している主な課題は、過度の生物医学志向型、疾患重視型、技術主導型および医師 支配型の保健サービスから脱却しなければならないということである。ヘルスケアと保健体制そのも ののバランスを回復する必要があることは明白である。さらに多くのことを実践する必要があり、戦 略的措置の枠組みを妥当とする根拠基盤がある。
本書に記した政策の枠組みは、アジア太平洋地域における保健体制のバランスを図り、21 世紀の最 適かつ総体的でひと中心のヘルスケアをめざして新たな方向づけを与える経路を図式化している。こ のためには、 4 つの重要な政策および活動領域からなる包括的で前向きな改変が必要であり、 規範の変 化を継続的に推進して維持することになる、ヘルスケアを支える重要な人々に対応している。この 4 領域は以下のとおり: (1)個人、家族および地域社会(2)医療従事者(3)ヘルスケア機関(4)保健 体制。
真の変革を起こすためには、この 4 領域の相互関係において、保健体制のあらゆる部分で互いに改 変を補強しあうことが必要になる。最終的に改変を可能にするには、すべての領域内と領域間のリー ダーシップが必要である。
アジア太平洋地域では保健体制策定レベルが多岐にわたることを認識し、本政策の枠組みでは規範 を定めることはせず、指針のみを示すことにする。これは包括的ではあるがすべてを網羅しているわ けではなく、ひとをヘルスケアと保健体制の中心に位置づける際に役立つエビデンスに基づく政策手 段のリストを加盟国に提供するものである。加盟国は、独自のニーズと状況に基づき、改革と介入を 適切に組み合わせて採り入れることができる。
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ひと中心のヘルスケア
4.1
個人、家族および地域社会
総体的で思いやりのあるヘルスケアには、ケアを必要としている人々とケアを提供する人々との間に 効果的なパートナーシップが必要である。これを実現するためには、個人、家族および地域社会がヘル スケアと保健制度策定に積極的に参加できるようなよりよい情報を提供し、多くの権限を付与するため の能力構築を支援する活動が必要である。戦略的対策として、以下の事項が挙げられる:
(a) 健康リテラシーを高める。 • 地域社会およびマスメディア教育キャンペーン。 • 学校でのスキル重視型健康教育プログラム。 • 診療の際、書面に記載された情報と口頭説明による情報を組み合わせて利用する。 • ウェブを通じてのエビデンスに基づく健康教育。
(b) 意思決定への有意義な参加につながるコミュニケーションスキルと交渉スキルを提供する。 • コンピュータ主体およびウェブ主体の健康教育パッケージなど、個々に合わせた包括的な 意思決定支援ツール。 • 診察の録音や概要をまとめた文書など、医療記録に適宜アクセスできること。
(c) 自己管理およびセルフケアを実行できる能力を向上させる。 • 慢性疾患管理トレーニングプログラム。 • コンピュータまたはウェブベースの、ターゲット設定した健康教育プログラム。 • 適切な患者やピアサポートグループへの紹介。 • 処方薬の使用について明確にわかりやすく記載された指示説明書を提供するなど、薬物療 法に対する患者の遵守を促す介入。
(d) 自発的なセクター、地域社会に基盤を置く組織および専門機関が相互支援を拡充する能力を高 める。 • ボランディアトレーニングおよび支援プログラム。 • 自助プログラム用の資金調達。 • 非政府組織用の資金調達機構。
政策の枠組み
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(e) 保健サービス計画立案への地域社会参加を支援し、地方自治体と地域社会との共同作業を推進 する社会インフラストラクチャーの促進。 • 地方自治体、地域社会、健康志向グループおよび消費者組織向けの参加および協力の機構。 • 消費者組織とその代表者への資金調達とトレーニング。
(f) 保健サービス提供に対する地域社会の参画を提唱し、これを支援するコミュニティリーダーを 育成する。 • 地元地域社会で適任者を特定。 • リーダーシップ育成プログラム。 • 病院内委員会、ヘルスケア諮問委員会および地域社会健康プログラムへの参加機構。
4.2
医療従事者
有能な医療従事者は、保健サービスを利用する人々のニーズ、好み、期待に応えるヘルスケアを提 供しなければならない。この領域で最も有効かつ適切な介入は、医療従事者に対する適切な教育とト レーニングである。戦略的対策として、以下の事項が挙げられる:
(a) 総体的で思いやりのあるケアを提供する能力を高める。 • ひと中心のケアに取り組む医療従事者のコアコンピテンシーを特定。 • 医療従事者用の教育プログラムとトレーニングプログラム全般において、コアコンピテン シーの推進と統合を図る。 • 以下の特徴を備えた包括的で調和のとれた医学、看護および保健関連カリキュラム(大学生、 大学院生、 継続的な専門職育成を含む) ならびに地域社会に基盤を置いたトレーニングの開発。 スキル重視型 生物-心理社会的要因およびスピリチュアルな要因を重要視 臨床面を重視した科目に加えて、人間性に主眼を置いた科目(医学倫理など)も組み 入れる。 コミュニケーションスキル、信頼の構築およびテーラーメイド型介入を扱う。 文化的コンピテンシーを高める。 健康と疾患の心理社会的側面とヘルスケアにおける伝統医学の役割について理解を促 す。 エビデンスに基づく実践を推進する。 家庭医学と専門医学とのバランスを重要視する。
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ひと中心のヘルスケア
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ひと中心のヘルスケアという価値観を学生に浸透させるために、ロールモデルを利用 する。
-
学生たちが複数の専門分野からなるチームでの活動に必要なスキルを構築できるよう にするため、臨床研修期間中に医学生、看護学生および保健関連学生を一カ所に集め て顔合わせを行う。
-
内省的実践の文化を繰り返し説く。 生涯学習、個人の成長と発達を奨励する。 ひとの健康と福祉に携わる重要性を教え込む。 多岐にわたる指導および学習戦略を活用する。 さまざまな形式(インターネット、専門家協会および学術誌)で、医療従事者向けの 継続的な専門開発を提供する。
(b) 質が高く安全で倫理的なサービスの意識を高める。 • カリキュラムと継続教育におけるひと中心主義という価値観の形成と強化、専門職の行動 規範および労働力の開発と規制に関する政策。 • ヘルスケアにおけるプロフェッショナリズムとヒューマニズムを支持し、活発な教育モデ ルを通じて受講生に価値観を伝えることのできる臨床教育者とロールモデルの認識なら びに支援。
4.3
ヘルスケア機関
ヘルスケア提供を組織化して管理するという手段は、質の高いヘルスケアの供給意欲を高める刺激 材料(incentive)を提供できるほか、さまざまな限定された専門的見解やプログラム領域に基づいて サービスを提供している多数の医療提供者によってもたらされるケアの断片化に対処することができ る。
施設レベルでみた場合、患者、医療従事者および他のスタッフのニーズに応える方策を採り入れな ければならない。組織レベルでみた場合の有効な介入は、物理的環境、サービスの連携とケアの継続 性、複数の専門分野からなる共同作業とパートナーシップ、患者の教育とカウンセリング、ケアモデ ル、安全で質が高く倫理的なサービスの意欲を高める刺激材料、リーダーシップ能力と特に関連して いる。戦略的対策として、以下の事項が挙げられる:
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(a) ヘルスケアを提供される人々と医療従事者にとって一助となる快適な環境を提供する。 • 患者とその家族だけでなく施設職員も、社会面、情緒面およびスピリチュアル面の支援を 受けられるようにするため、快適さ、安全性および機能性を追求してデザインされたヘル スケア環境。 • 適切で柔軟性のある受診方針。 • 一般の人々、 患者および職員を守るリスクマネジメント方針 (感染予防管理ガイドライン) 。 • 絶好の健康教育の場として、保健施設やヘルスケア機関の構内にある待合室や公共スペー スの利用。
(b) 効果的で効率のよいケアの調整を確保する。 • 明確でアクセスしやすく、理解しやすいサービスプロトコールによって患者フローを改善 する。 • 診療予約を適切に設定する。 • 特異的な介入についての通知。 • 広報、印刷物、ポスターのほか、保健サービスの案内を示した表示。 • 携帯型の患者健康記録(電子媒体またはハードコピー) • 退院および患者紹介のためのプロトコール。
(c) 複数の専門分野からなるケアチームの結成と強化。 • それぞれのヘルスワーカーの職務内容を詳細に定め、チームメンバーとしての義務と責任 を具体的に示す。 • チーム開発と有効なチームワークを支援する(グループダイナミクス、コミュニケーショ ンスキルと交渉スキル、対立の解消に関するトレーニングなど) 。 • 分野間のコミュニケーションプロトコール。
(d) 患者教育、家族の関与、自己管理およびカウンセリングをヘルスケアに統合して強化する。 • 医療従事者のための簡潔かつシンプルで調和のとれた有効なコミュニケーションプロト コールとカウンセリングプロトコール。 • 患者とその家族向けのセルフケアおよび家庭でのケアに関する教育の手引きとセッショ ン。図解や実技指導を適宜用いる。
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ひと中心のヘルスケア
(e) 安全で質が高く、倫理的なサービスの基準と提供意欲を高める刺激材料を供給する。 • レベルやタイプが異なる保健施設に対する人数と労働力の組合せなどを含めた職員配置 基準。 • 経済的に保証された職員の給与水準。 • 模範的な職員に対する公的な表彰などを含めた、業績に基づく報酬体系。 • 継続的な専門性開発とコンピテンシーに基盤を置くスキルトレーニングの機会。 • 継続的な品質改善をめざしてターゲット設定した個人およびチーム業績のモニタリング と評価。
(f) ケアモデルの導入と評価。 • すべてのサービス領域とサービス環境における新しいケアモデルの継続開発と共有(福祉 クリニック、ナースプラクティショナー、グループ療法をはじめとする心理社会的介入、 地域社会のケアを含めた共同利用型ケアなど) 。
(g) ひと中心のヘルスケアを率先して支持することに関して、保健サービス管理者のリーダーシッ プ能力を高める。 • リーダーシップ、経営管理および組織開発のコンピテンシーを高めるための能力構築。 • 複数の専門分野にまたがるリーダーシップチームを結成する。 • リーダーシップトレーニングプログラム。
4.4
保健体制
ヘルスケアの組織化、提供および財源に関して実施されてきた政策は、最善とはいえない。健康セ クターだけでなく、健康転帰や健康状態に影響を与える他のセクターにも、ステークホルダーを関与 させることが重要である。支援的な保健体制は、組織レベル、医療従事者レベルおよび保健利用者レ ベルで実践される介入の有効性を保証することができる。戦略的対策として、以下の事項が挙げられ る:
(a) プライマリケアとプライマリケアに従事する労働力の開発と強化。 • プライマリケアに主眼を置き、プライマリケアに従事する医療従事者をバランスよく地域 に配置するための人材計画の立案。 • 教育実践の基準を設定し、家庭医学を提起する際に、専門家団体が参加する。 • プライマリケアと高度なレベルのケアとの間にネットワークを形成し、紹介システムを構 築する。
政策の枠組み
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• 不利な立場に置かれている異文化コミュニティのニーズを積極的に考慮した教育とトレ ーニングの選択基準。 • 必要に応じた伝統医学の実践基準。 • 正式に認可された伝統医学の医療従事者または施設との連携ならびにアクセス。
(b) ケア提供者の積極的な行動を誘発し、地域住民全体のアクセスと経済的リスク保護を改善する 奨励金を適宜設ける。 • 品質と対応力を考慮した、エビデンスに基づく購入手配および支払いシステム。 • (たとえば、サービスの品質改善と思いやりのあるケアを目的とした)業績評価システム と業績に基づく助成金や補助金。 • 社会健康保険計画。
(c) よりよい健康転帰の獲得を目的とした、ヘルスケアと健康体制そのものを改善する手段に対す る強力な根拠基盤の構築。 • ガイドラインおよびサービス評価ツールの開発。 • 総体的で思いやりのあるケアを促進し、文化的に適切であり、また公平さの問題に取り組 む、革新的なアプローチと介入に関する調査研究と開発を請け負うこと。 • 継続的な保健体制開発プロセスの指針とするためのヘルスケア改革と介入のモニタリン グおよび評価。
(d) 合理的な技術利用を保証する。 • 経済的および社会的コストとヘルスケアおよび健康転帰に対して予測されるよい影響と のバランスを図る技術評価基準。 • 参加型の技術評価プロセス。
(e) 専門性水準のモニタリングを強化する。 • 医療専門家の教育と実践の基準を確実に遵守させる機構。 • 専門性水準の維持に関する公的説明責任。
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ひと中心のヘルスケア
(f) 保健サービスの組織化、提供および財源に関する公的説明責任対策の制定。 • 保健施設の個別のサービスや部門などを含む、当該健康サービス提供機関やヘルスケア機 関による実績の一般公開報告。 • 報告が品質および制度改善の文化につながり、破滅的な訴訟や非難には至らないことを確 実にするなど、業績を公的に報告するための社会的および制度的な準備。
(g) 患者と地域社会のヘルスケアの質に対する懸念をモニタリングし、対処する。 • 苦情の調査を目的とした実行しやすく透明性の高いシステム。 • 問題をすみやかに解決するための調停機構。 • 問題解決のための独立団体が実在すること。 • 患者と一般大衆の満足度調査。 • 医薬品安全性監視(pharmaco-vigilance)などの有害事象モニタリング。
(h) 保健体制のなかで有害事象を発現した人々を支援する。 • 調査の支援を目的とした診療記録へのアクセス。 • 有害事象の自主調査 • しかるべき場合には、カウンセリングや補償を含めた救済機構。
(i) 患者情報の保護を保証する。 • 患者情報の法的保護。 • ヘルスケア機関でのプライバシー保護方針。 • 機密扱いとされる保健関連情報を担当するヘルスケア機関職員またはそのような情報へ のアクセス権をもつ職員を対象とするトレーニング。
政策の枠組み
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結
論
保健体制は、品質と安全性に加えて、保健制度がサービスを提供する人々のニーズ、正当な要求お よび理にかなった期待に対する対応力といった課題と格闘し続けている。普遍的にアクセス可能な有 効で科学的根拠に裏づけられたヘルスケアを提供するためだけでなく、自分自身の健康とヘルスケア に関する情報、心理社会的支援および意思決定への参画にかかわる人々の権利、ニーズおよび好みを 尊重する方法でサービスの設計と提供が行われることを保証するため、経済的、人口動態学的および 社会的な影響力が保健体制にますます圧力をかけるようになった。ヘルスケアに対する革新的でバラ ンスのとれた総体的なアプローチのニーズは、全世界の保健体制にとって急務になった。
支援的で人道主義的な保健体制では、ヘルスケアの顧客層とステークホルダー全員の多面的なニー ズと責任に十分に配慮したヘルスケアへの前向きなアプローチを取り入れ、 これを推進する。 これは、 有効かつ好意的なヘルスケア機関、有能で対応力のある医療従事者、情報と権限を与えられた個人、 家族および地域社会が、互いにひと中心のヘルスケアから利益を得ることができるとともに、ひと中 心のヘルスケアに貢献することのできる体制である。
保健体制にはさまざまな社会経済学的、文化的および政治的背景があるが、ヘルスケアへのひと中 心型アプローチは、あらゆる開発段階のすべての形態の保健体制にとって関連性があり、適用できる ものである。資源が豊富なヘルスケアと資源面のハンディを背負っているヘルスケアのいずれからも、 優れた実績が得られており、既存の資源と能力を賢明かつ適切に利用することにより、どのような保 健体制でも好ましい変化と結果を得られることを表している。
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ひと中心のヘルスケア
ひと中心のヘルスケアをめざして保健体制の規範を変換し、個人との調和とバランスならびに人々 と周囲環境との調和と絆を回復しようとする取り組みには、多くの潜在的なベネフィットが見込まれ る。一般にこれらの具体例として、患者の安全性向上、治療計画に対する遵守率の改善、治療および 健康転帰の改善、ケアに対する患者満足度の向上、患者とその家族、地域社会および世の中のクオリ ティ・オブ・ライフ(生活の質)の改善などが挙げられる。権限を与えられた患者、家族および地域 社会がしかるべきヘルスケアを利用することによってもたらされるケア提供者の満足度、患者の信頼 と誠実さ、一般大衆からの好評価および費用対効果に優れた持続性のあるヘルスケアという観点から みれば、これらのベネフィットはケア提供者側にも及ぶ。
本書に記した政策の枠組みは、ひと中心のヘルスケアを奨励し、国家レベルでの政策開発と履行を 推進することのできる、エビデンスに基づく介入ならびに最善の事例からなる項目としてデザインさ れている。西太平洋地域の国々や各領域は、独自のニーズと状況を踏まえて、この政策の枠組みから 指針を得るべきである。
この政策の枠組みによって、地域レベル、小地域レベル、国家レベルおよび地方レベルですべての ステークホルダーが協力しながら共同作業に取り組むための道を開くことができる。 WHO 西太平洋地 域事務局は、支持、技術支援および当該の国々や領域への援助を通じて本政策の枠組みのさらなる発 展と遂行をめざすとともに、しかるべき調整、モニタリングおよび評価機構を設立して改革を支え、 西太平洋地域にとどまらないすべての人々に対してひと中心のヘルスケアを実現するために、リーダ ーシップの役割を果たす所存である。
政策の枠組み
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付録:地域委員会決定事項 WPR/RC58.R4
ひと中心型ケアのイニシアチブ (People at the Centre of Care Initiative)
地域委員会
WPR/RC55.R1, WPR/RC54.R2 および WPR/RC53.R6 をはじめとする西太平洋地域委員会に よる先の決定事項を想起し、ヘルスケアの質を改善するとともに、生物医学的倫理、公正さ、平等お よび人権の原理原則を含めた、健康を決定づける幅広い心理社会的、文化的、倫理的および社会的要 因に留意する必要への注意を喚起する。
WPR/RC55.R1 を想起し、 地域事務局長に対し、 加盟国および WHO 東南アジア地域事務局と協力 して、健康転帰に影響を与えている心理社会的要因の重要性を反映した政策枠組みの草案を作成し、 適切な時期に地域委員会に対してその草案を提示するよう要請する。
プライマリヘルスケアの強化と健康促進をめざしてひと中心のケアを加速させる意義を強調する。
健康を決定づける幅広い心理的、文化的および社会的要因の重要性とヘルスケア転帰ならびに全体 の健康と福祉に対する影響力を正しく認識する。
こころとからだ、ひとと環境とを調和させるヘルスケアアプローチのニーズを理解する。
保健体制にはさまざまな社会経済的、文化的および政治的な背景があるが、ひとを中心に位置づけ て患者に権限を与えるヘルスケアアプローチは、すべての開発段階であらゆる形態の保健体制に有意 義であることに留意する。
ひと中心のヘルスケアに向けた有効で持続性のあるヘルスケア改革と新たな方向づけには、複数セ クターの参画と全員の尽力が必要であることに留意する。
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ひと中心のヘルスケア
予防、プライマリヘルスケア、健康促進およびその他の個々を主体としたアプローチを対象範囲と するプログラムには、ひと中心のヘルスケアが重要であることを認識する。
ひと中心のヘルスケアは、患者の安全性、治療計画に対する遵守率、治療と健康転帰、ケアに対す る満足度、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)に加えて、権限を与えられた患者がしかるべきヘ ルスケアを利用することによってもたらされるケア提供者の満足度、患者の信頼と誠実さ、一般大衆 からの好評価および費用効果に優れた持続性のある保健体制に対して、よい影響を与えていることを 認識する。
ひと中心型の活動を推し進め、保健体制にとって望ましい改変を実現するための現行の取り組みを 統合し、基盤を固め、拡大するというニーズを強調する。
「ひと中心のヘルスケア:政策の枠組み」草案を検討する。1
1. 加盟国がそれぞれの国家背景を踏まえてひと中心型ヘルスケアの政策と介入を開発および実 践するための指針として、 「ひと中心のヘルスケア:政策の枠組み」草案を是認する。
2. 加盟国に対して、以下の事項を勧告する: (1) 複数セクターが関与する国家的な活動に着手するよう考慮し、政策の枠組みという観点か ら既存の保健政策とプログラムを検討する。 (2) 政策の選択肢と介入を厳しく評価し、国家情勢および地域情勢に対するそれらの意義と適 用可能性を踏まえて、採用と実行に優先順位をつける。 (3) WHO と協力して根拠基盤を強化するとともに支持活動と社会動員活動を推進し、保健体 制にひと中心のアプローチを制度化する。
3. 地域事務局長に以下の事項を要請する: (1) WHO 東南アジア地域事務局および関連専門家との取り組みを継続し、国際基準となるガ イドラインの策定と加盟国への実用的なガイドラインの提供を通じて、ひと中心のヘルス ケアをめざして保健体制に新たな方向づけを与える。
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文書 WPR/RC58/11 の付録
政策の枠組み
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(2) 支持活動と社会動員活動を請け負い、ひと中心のヘルスケアに対する現行の取り組みとイ ニシアチブを統合し、これを拡大することに専念する。
(3) 活動計画ならびにモニタリング機構や評価機構を含めた実践ツールの開発に関して加盟 国を支援し、加盟国とともに取り組むことにより、保健政策と介入がよりよいひと中心型 ヘルスケア、良好な健康転帰および健康と福祉の改善につながることを保証する。
(4) 適切な時期に、地域委員会に対してイニシアチブの進捗状況を報告する。
第 8 回ミーティング、2007 年 9 月 14 日 WPR/RC58/SR/8
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ひと中心のヘルスケア